本人確認

医療の現場では本人確認が大切。

 

それは当たり前のことで、行うべき処置が行うべき人に行われなければ、それは時として傷害となる。

でも、今日の本人確認はまた違う意味合いのある連絡だった。

 

警察から本人確認の依頼が入った。それが意味する所はご遺体がご本人と断定できない状態ということ。

 

絶命してから大分の時間のたったご遺体だった。

病院で人が亡くなるという時、その人の生きている時間の延長に死という結果がある。ご遺体となった後も生きていた時間を思いながら最後の処置をさせてもらい、その方の最後の時間を共にする。

 

でも写真のご遺体は、本当の人の《死》を感じた。そこには生きている時間は全く感じられなくて、だだ凄惨な死だけが写されていた。

 

苦慮しながらも今回は歯の治療痕が一致し、ご本人と確認が取れた。幸いにも名もなき人として荼毘に付されるという事はなくなった。

 

当たり前に思っていた生きた時間の延長としての死が、実はとても幸せな事だと考えさせられた時間だった。